iDeCoの受取り方は3種類
iDeCoの受取り方法は、全部で3種類あります。自分の退職金や公的年金も確認しつつ、最もメリットの大きい受取り方法を選びましょう。
年金|有期年金または終身年金として受取る

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iDeCoは年金形式での受取りが可能です。一般的に有期年金として扱われ、受取期間は5〜20年、受取回数は年1〜12回まで選択できます。年金受取の場合は雑所得扱いとなり、公的年金等控除が適用される仕組みです。
証券会社によっては、終身年金として生涯受取ることもできます。選択できる期間や回数は証券会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
iDeCoを年金として受取る場合、積み立てた資産は指定した年数で分割されます。老後の生活費を補てんできるほか、受取りが終わるまでは残された資産を非課税で運用できるのがメリット。ただし、iDeCo口座を保有し続ける限り、最低でも毎月66円の手数料が発生する点には注意が必要です。
一時金|積み立てた資産を一括で受給する

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iDeCoの資産を一括で受取りたい場合は、一時金を選択しましょう。一時金は、まとまった資金を一度に得られるのがメリットです。
受取り時には、節税メリットの大きい退職所得控除が適用されます。ただし、退職金がある場合はiDeCoの一時金とどちらを先に受取るか、いつ受取るかによって十分な控除を受けられないこともあるので注意が必要です。
年金と一時金|一部を一時金で、残りを年金で受取る

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年金と一時金は組み合わせることも可能です。一部を一時金として受取り、残った資産を年金として受取れます。
年金と一時金を併用して受取るメリットは、iDeCoに適用される所得控除を計算しつつ、ライフスタイルに応じた資金を計画的に受取れること。一方で、手続きが複雑になる点には注意しましょう。
iDeCoの受取り方によって税金の計算方法が異なる
iDeCoでは、積み立てたお金を年金として受取るか、一時金として受取るかによって税金の計算方法が異なります。以下で詳しく解説するので、課税対象となる金額がどのように算出されるのか把握しておきましょう。
iDeCoを年金で受取る場合は雑所得として計算する

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iDeCoを年金でもらうときは、公的年金と同じ雑所得として計算します。雑所得とは、給与所得や利子配当所得などに分類できない所得のこと。iDeCoや公的年金、副業による所得が挙げられます。
iDeCoや公的年金による雑所得は、公的年金等控除の適用が可能です。公的年金などの収入額の合計から控除額を差し引き、残った金額に対して税金がかかります。控除額は、年齢や収入に応じて変動する仕組みです。
以下の速算表では、課税対象となる雑所得を簡単に計算できます。左の項目は公的年金などの収入の合計額(A)、右の項目は公的年金等に係る雑所得の金額です。
【受取り時の年齢が65歳未満の場合】
- 60万円以下:0円
- 60万円超130万円未満:(A)−60万円
- 130万円以上410万円未満:(A)×0.75−27.5万円
- 410万円以上770万円未満:(A)×0.85−68.5万円
- 770万円以上1,000万円未満:(A)×0.95−145.5万円
- 1,000万円以上:(A)−195.5万円
【受取り時の年齢が65歳以上の場合】
- 110万円以下:0円
- 110万円超330万円未満:(A)−110万円
- 330万円以上410万円未満:(A)×0.75−27.5万円
- 410万円以上770万円未満:(A)×0.85−68.5万円
- 770万円以上1,000万円未満:(A)×0.95−145.5万円
- 1,000万円以上:(A)−195.5万円
上記は公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合
※参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(外部サイト)
iDeCoを一時金で受取る場合は退職所得に該当

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iDeCoを一時金で一括受取りする場合は退職所得に該当するため、退職所得控除を受けられます。課税対象となる退職所得は、(収入金額-退職所得控除額)×1/2で算出可能です。退職所得控除額の計算式は、以下のようにiDeCoの加入年数によって異なります。
- 加入年数20年以下:40万円×加入年数
- 加入年数20年超:800万円+70万円×(加入年数-20年)
加入期間が30年以上の場合は退職所得控除が1,500万円となるため、1,500万円以下の一時金なら非課税で受取れることも覚えておきましょう。
iDeCo受取り時の税金はいくら? 税額をシミュレーションしよう

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iDeCoの受取り時にかかる税金を、3つの受取り方法ごとにシミュレーションしてみましょう。運用利回りは3%、掛金は月2万円、運用期間は30年、受取り時期は60歳と仮定します。受取り時の積立額は1,157万4,260円です。
一時金として受取る場合、退職所得控除によって1,157万4,260円を全額非課税で受取れます。年金で10年間に分けて受取る場合、受取り額は毎年111万5,620円、10年間で1,115万6,200円です。年金で受取ると、418,060円の税金が生じる計算になります。
60歳になった時点で700万円を一時金で受取り、残りを年金として5年間受取る場合、一時金に対して税金はかかりません。年金で受取る分の受給額は、1年間で91万4,852円、課税対象となる雑所得は31万4,852円。所得税率5%・住民税率10%とすると、年間の所得税額は15,742円、住民税額は31,485円、5年間の合計は23万6,135円です。
ほかに退職一時金や公的年金があったり、扶養親族がいたりすると結果が変わります。上記の例を目安にして、個々の状況に応じたシミュレーションを行いましょう。
iDeCo受取り時の税金で損をしないためのポイント
iDeCoの受取りで損をしないためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。節税効果を最大限活用できるよう、以下の注意点を正しく理解しておきましょう。
年金受取の場合はiDeCo以外の収入に注意

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iDeCoを年金として受取る場合、公的年金やほかの収入があると合算して税金を計算しなければならないため、納税額が上がる可能性があります。
収入が多い人は現役並み所得者とみなされ、70歳以上になっても国民健康保険料が3割負担になる点にも注意が必要です。一般的に、現役並み所得者の目安は年収380万円程度とされています。iDeCoを年金で受取るときは、事前に収入と納税額をシミュレーションしておきましょう。
退職金と一時金を同時に受取ると、税金が増える可能性も

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退職金と同時にiDeCoを受取ると、税金が増える可能性があります。受取り額は合算される一方で、加入年数は会社の勤務年数とiDeCoの加入期間のうち、控除額の大きいほうのみが適用されることを覚えておきましょう。
たとえば、38年勤務した会社の退職金1,500万円と、30年間積み立てたiDeCoの一時金1,500万円を同時に受取った場合、税制上は加入年数38年、3,000万円の収入があったものとして計算されます。退職金だけを受取るなら、退職所得控除によって退職所得は0円です。しかし、退職金とiDeCoを同時に受取る場合は、470万円の退職所得が発生します。
まとまった金額の退職金がある人は、iDeCoの一時金を受取る時期をずらす工夫を検討しましょう。具体的な方法を次項で2つ解説します。
5年ルールなら退職所得控除を2回受けられる

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退職金がある人は、退職所得控除の5年ルールを活用しましょう。5年ルールとは、iDeCoの一時金と勤め先からの退職金を5年あけて受取れば、退職所得控除を2回適用させられる仕組みのことです。
仮に4年以内にiDeCoと退職金を受取った場合、iDeCoの加入期間と会社での勤続年数のうち、重複している期間分の退職所得控除は差し引いて計算しなければいけません。iDeCoの一時金を60歳で受取り、退職金は65歳に受取るといった工夫をすることで、より高い節税効果が見込めるでしょう。
先に退職金を受取る場合は19年ルールに注意しよう

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退職金の受取り後にiDeCoを受給する場合は、19年ルールに注意が必要です。勤め先の退職金を受取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受取ると、会社の勤務年数とiDeCoの加入期間の重複部分は退職所得控除を適用できません。
反対に、退職金を受取ってから20年後にiDeCoの一時金を受取れば、退職所得控除の制限を受けずに済みます。iDeCoは受給開始年齢を75歳まで延長できるため、会社からの退職金を55歳までに受取れば、19年ルールを回避できるでしょう。
退職金とiDeCoの一時金は、受取る順番やタイミング次第で節税額が大きく変わるので、受取り方法は早めに検討しておくことをおすすめします。
2025年の法改正により5年ルールが10年に変更される

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2025年の制度改正によって、iDeCoで一時金を受取る際の5年ルールが10年に変更されることが決定しました。一時金を受取ってから10年以内に退職金を受取る場合、退職所得控除が使えないため、税負担が増える点に注意が必要です。
退職所得控除を最大限に活かす受取り方として、先にiDeCoの一時金を受取り、10年以上経ってから退職金を受取る方法が挙げられます。あるいは、iDeCoを年金として分割で受取り、公的年金等控除で税金を抑えるのも手です。
先に退職金を受取り、10年以上空けてからiDeCoの一時金を受給することで、両方の退職所得控除を受ける方法もあります。10年ルールは2026年1月1日以降に支払われる退職一時金から適用されるので、受取るタイミングや方法を事前に検討しておきましょう。
※参考:財務省「令和7年度 税制改正の大綱」(外部サイト)
年金と一時金はどちらが得?【ケース別】iDeCoのおすすめの受取り方
iDeCoで節税効果が大きい受給方法は、人によって異なります。ここからは、パターン別におすすめの受取り方法を解説するので、参考にしてみてください。
退職金が多い人にはiDeCoの年金受取がおすすめ

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退職金だけで退職所得控除を大幅に超える会社員の人は、年金での受取りを選ぶとよいでしょう。
一時金に適用される退職所得控除は控除額が大きいので節税効果も高いとされていますが、退職金やiDeCoの一時金が高額になると所得を十分に減らせないので、かえって税金が増える可能性もあります。
年金として受取る場合、年齢が65歳以上で、iDeCoと公的年金の合計が年間158万円以下(基礎控除48万円を含む)であれば、所得税は発生しません。受取り方法を検討する際は、iDeCoだけでなく、退職金の受取り額もあらかじめ確認しておくことが大切です。
退職金が少ない人や個人事業主などは一時金がお得

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退職金が少ない人、退職金がない自営業者や専業主婦(主夫)は、一時金での受取りがおすすめです。退職所得控除で大幅に課税所得を減らせるので、税金の負担を軽減できます。30年間積み立てた場合は、ほかの退職所得と合算して1,500万円まで非課税です。
自営業者や専業主婦(主夫)のようにそもそも退職金がない人は、iDeCoの一時金との合算によって退職者控除のメリットを受けられない心配もありません。
iDeCoを始めるなら証券会社ランキングをチェック
iDeCoの商品ラインアップや手数料は証券会社ごとに異なります。できるだけ手数料が安く、自分が運用したい商品の取りそろえがある証券会社を選びましょう。
どの証券会社を利用するかによって将来受取れる金額も変わるため、入念な下調べのうえで口座の開設先を決めることが重要です。
以下のページでは、おすすめの証券会社をランキング形式で紹介しています。自分にあった証券会社や人気の証券会社を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。