プロフィール

外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。『夫婦で貯める1億円』(ダイヤモンド社)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。
世界的にインフレが長引いていますが、日本でも食料品やガソリンや不動産価格等が上昇しています。昔からインフレ時には金や銀、食料やエネルギーなどの商品、あるいは不動産を持つことが有効だとも言われています。2022年の金融市場では28年ぶりに株式と債券の同時安が起こりました。長期間続いた低金利の時代からの大転換の中、インフレに対応できる資産運用を心がける必要があります。NISAの成長投資枠の対象にもなっているETF(上場投資信託)を活用して様々なアセットに投資する方法をお伝えします。(ファイナンシャル・プランナー 花輪陽子)
旧制度の一般NISAを引き継ぐ形のNISAの成長投資枠では、上場株式、公募株式投資信託、ETF(上場投資信託)などが投資対象商品です。一般NISAでは公募株式投資信託すべてを対象としていましたが、NISAの成長投資枠では対象が絞られ、現状では約1,000本が発表されています「投資信託協会ホームページ(外部サイト)」このリストの対象商品から、様々なETFから選ぶことができます。
ETF(上場投資信託)とは株式市場に上場している投資信託のことで、株式と同じように取引ができます。NISAの成長投資枠はETFにも投資をすることも可能です。例えば、東京証券取引所には約300銘柄のETFが上場しています。ETFには、国内株式指数に連動する商品以外にも、外国株式、債券、REIT(不動産投資信託)、商品(コモディティ)等様々な種類があります。
また、種類にもよりますが、一般に投資信託よりETFの方が信託報酬が安いとも言われています。ETFを売買する際には証券会社に支払う手数料の他にETF保有期間中にかかる信託報酬等がかかります。一般的な投資信託の場合、換金を申し込んでから口座に資金が戻るまでに4営業日程度かかります。ETFの場合、株と同じように好きなタイミングで売買ができ、売却代金は受渡日(約定日を含めて3営業日目)から出金ができ、タイミングを見て希望に近い価格で売却をしたり、換金化したりが投資信託よりもしやすいです。
REITとは、投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、得られる賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に分配する商品です。不動産の中身は、オフィスビル、商業施設、マンション、ホテルなど様々です。REITを購入することで、間接的に様々な不動産のオーナーとなることができ、不動産のプロによる運用の成果を享受できます。現物の不動産投資をすることと比べて少ない元手で効率よく複数の物件に分散投資が可能です。
J-REITとは、日本の証券取引所に上場しているREIT(不動産投資信託)を指します。REITの仕組みはアメリカで生まれましたが、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれています。J-REITは2001年9月に初めて上場した歴史があります。
東証に上場しているREITは約60銘柄です。この中から個別のREITを選ぶのが面倒という人にとってはREIT市場全体を反映する「東証REIT(リート)指数」に注目をするのも手です。株式市場の「TOPIX(東証株価指数)」のようなインデックスです。例えば、下記の銘柄は成長投資枠でも購入できます。
iFreeETF 東証REIT指数<1488>
REITに投資する際に重要な投資指標として、分配金利回りがあります。分配金利回りとは、年間の予想分配金を投資額で割って求める利回りのことを指します。具体的には、以下の計算により算出します。
「分配金利回り=年間の予想分配金÷投資額」
例えば、年間予想分配金が25,000円の投資法人に1口50万円で投資する場合、分配金利回りは5%程度となります。実際には、不動産の取得や売却等によって予想分配金は変動します。
25,000÷500,000=5%
REITをNISA口座で投資すると、分配金と売却益が非課税になるのでメリットが大きいです。特にREITの分配金は高いので、非課税の恩恵は高いです。先程のケースで考えると、25,000円の分配金をNISA口座で受けた場合、手取りは25,000円です。しかし、課税口座で受けると手取りは約20,000円となり、約5,000円も変わります。
REITの情報を取得できるポータルサイトもあり、REITの保有物件も組入割合が上位の物に関しても確認できます。利回りランキングなどもあり、投資をする際の情報が整理されています。もちろん値上がり(値下がり)もあるために、利回りだけではなく、成長性なども含めて総合的に投資の判断をしましょう。元本や分配金は保証されていませんので、投資にあたっては十分ご注意下さい。
JAPAN REIT 不動産投資情報ポータル(外部サイト)
商品とは商品先物市場を通じて取引ができる金融商品のことを指します。具体的には、エネルギー、貴金属、農産物などに大分類できます。エネルギーは原油、ガソリン、天然ガスなど、貴金属は金、銀、プラチナ、銅、アルミニウムなど、農産物は小麦、大豆、とうもろこしなどがあります。一般にインフレに強く、新型コロナウイルスやウクライナ情勢の影響から、様々なコモディティが注目されるようになりました。商品市場には特有のリスクもあります。例えば、農産物はその年の天候の影響を受けます。そのため、株や債券にバランスよく分散投資をしながら、ポートフォリオ(資産配分)の一部として検討しましょう。また、金などは配当もなく、コストもかかるために値上がり益の享受が中心です。REITのように分配金が頻繁に得られるわけではないので、特色を理解しましょう。
商品投資は現物や商品先物市場で取引できる他、商品ファンドやETFを利用して投資をする方法があります。また、金や原油などの単体だけではなく、コモディティ全体やセクターに投資をすることも可能です。
例えば、金のETFに投資をしたい場合、野村アセットマネジメント株式会社のNEXT FUNDS<1328>が成長投資枠の対象となっています。このETFは円建てで、日本の証券会社などを通して購入ができます。
その他の金への投資手段として、現物取引や先物取引等もありますが、NISAの対象となっているのはETFを通じた取引に限定されます。キャピタルゲイン(値上がり益)を狙いにいくのであればETFを利用すると初心者でも簡単に取引ができます。商品指数に連動するETFは基本的に先物価格に連動して動きますが、一般に先物よりも値動きがマイルドになります。ETFであれば先物取引の動きを確認しながら、上がり始めたら買い、下がり始めたら素早く売ることも可能です。現物取引の場合、保管料などのコストもかかり、税金の計算も異なります。また、先物取引はロールオーバー(取引最終日前に決済し、次限月以降のポジションに乗り換える)等があり、慣れている方でないと難しく感じることもあるようです。
商品市場に着目をすることによって、株式投資への理解を深める効果もあります。なぜなら、商品価格の影響を受けるセクターや企業も多いからです。日本でも注目の投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは、近年、日本の5大商社株も含めてエネルギーなどに関連した株式を取得しています。直接コモディティに投資をしているわけではなく、資源価格の値上がりによって利益を享受する企業に投資をする方法もあるのです。企業に投資をする場合、配当や株主優待を受けることができる場合もあります。
資産運用をする際にはアセットアロケーション(資産配分)が最も重要な作業だと言われています。運用する資金を国内外の株や債券や不動産やコモディティなどにどのような割合で投資するのかを決める作業を指します。
ポートフォリオ(金融資産の構成)としては、伝統的な株式や債券を長期保有するのをメインにし、オルタナティブ投資(伝統的な投資対象とは異なる投資手段)はあくまでも2割以内などに限定することをおすすめします。
オルタナティブ投資とは、不動産、コモディティの他にもワイン、美術品、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ、オルタナティブ・クレジット(公開市場にアクセスできない企業などに対して資金提供を行うなど)などを含む場合もあります。オルタナティブ投資は株や債券と値動きが異なる傾向があり、ポートフォリオの分散のために主に富裕層に利用されています。運用資金が限られている投資初心者の場合はREITや金のETFなどを加える方法が手軽で始めやすいでしょう。
例えば、メインのポートフォリオは1本で、国内・先進国・新興国の株式と債券、国内・先進国の不動産の合計8資産に1本で投資するバランス型の投資信託を選び、こちらに金のETFを付け足すことも考えられます。
バランス型ファンドの代表的なものとして「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」や「たわらノーロード バランス(8資産均等型)」があります。これらのファンドの詳細は以下のページから確認いただけますので、興味のある方はチェックしてみてください。
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
たわらノーロード バランス(8資産均等型)
全てETFから選びたいという方は米国株式と債券に分散投資をしたETFも成長投資枠の対象となっています。こちらに東証REIT指数や金のETFを加えることも考えられます。
NEXT FUNDS S&P 米国株式・債券バランス保守型指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信
オルタナティブ投資の注意点としては、天候に影響されやすいなど、その資産特有のリスクがあり、決して元本保証ではないということです。また、ポートフォリオに必ず加えなければならないわけではありません。ある程度投資に慣れてきて、現在のポートフォリオにより多様性を持たせたいと考えている方に向きます。資産運用の勉強のためにも少額から投資を始めるのもよいかもしれません。また、ウォーレン・バフェットのように商品関連銘柄を含めるのも一つでしょう。このように、投資には様々な対象商品があります。それぞれの特徴を理解し、目的とリスクを踏まえながら、賢く資産を増やしていきましょう。
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NISAについては以下の記事でも詳しく解説しています。
NISAのメリット・デメリット
NISAで証券会社を変更するには
NISAでシミュレーション
NISAの成長投資枠 銘柄選びのポイント
NISAの成長投資枠とは
NISAのつみたて投資枠とは
本記事に掲載されている情報は2023年12月15日時点のものです。NISA制度に関する最新の情報は、金融庁ホームページ(外部サイト)をご確認ください。